はるか南の美しいサンゴ礁の海に、星の形の砂に彩られた小さな可愛い島がありました。島にはガジュマルの木が一本。夜ともなれば、星の砂は空に舞い上がり、島をあかるく照らすのでした。いったいこの星砂は、どんなふうにしてこの島にやってきたのでしょう。 これは島と海の生きものたちと星の砂をめぐる絵本。シンプルなお話に英語の対訳が付いている。圧倒的なのは、大胆かつ繊細なその絵。黒い海に深い青色、緑色の波がうねり渦巻き、月や星が金色にきらめき、赤やピンクのサンゴ、オレンジ色のいそぎんちゃく、色とりどりの魚や人魚が跳ねまわっている。 白い紙の上にイメージを描くのではなく、黒で塗りつぶした地を、こすり、引っ掻き、形と色を掘り出したような描き方に偶然性があっておもしろい。まるで砂の中から掘り出した宝物のように、黒の奥から、鮮やかな色彩と形があらわれている。明るいだけではない、暗さとまばゆい輝きが一体となった、不思議な魅力を醸し出している。 著者のCoccoは、心の闇を歌えるシンガーとして人気だった、沖縄出身のミュージシャン。2001年4月、とつぜん音楽活動を中止した。1年半振りに再開した活動のはじまりが、この絵本の制作だ。(中村えつこ)
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